シューマン
①アレグロロ短調作品8
②クライスレリアーナ作品16
③暁の歌作品133

マウリツィオ・ポリーニ(ピアノ)
録音:2001年

ポリーニ59歳の演奏です。深い創造力と表現力、そして心憎いほどの卓越した心理的描写でシューマンの夢幻界へと誘うポリーニの《クライスレリアーナ》は意外にも初録音です。今回のシューマンでも詩的な世界を見事に表現し、作品の裏側にある情緒を感じ取れる演奏です。牧歌的雰囲気を感じさせる主要楽節と2つの間奏曲で構成されている第2曲は甘い旋律の中にやや陰鬱な表現が印象的。静かな祈りの曲のような第4曲ではシューマン心の声を深みのある、あたたかな音で聴かせています。華麗で技巧的な第7曲は隠された美しい旋律線から生み出される多彩な音色に心奪われます。シューマンのクララへの愛の隠し言葉が折り込まれたこの作品を彼の音は雄弁に物語っています。《暁の歌》は作品番号が示す通り、シューマン最後のピアノ曲です。あまり演奏されることのない曲なので、ポリーニが演奏すること自体意外な印象ですが、それだけに貴重です。《クライスレリアーナ》は2017年刊行の名曲名盤500では.アルゲリッチ盤に次いで第2位に選定されています。

ポリーニのシューマンの録音は、70年代初めの「幻想曲」80年代の「交響的練習曲」そして2000年代に入ってからの「ダヴィッド同盟舞曲集」そしてこの本盤。年月を置き回を重ねるごとにポリーニの演奏はシューマンという人間に近づいているような気がします。そして本盤はその到達点かもしれません。シューマンとは、内田光子のように明確に自分の意思を形にして表現出来る人ではなくペライアのように一息に激しく且つ美しく表現出来る人ではありません。彼の内省的な激しさは時に伝わりにくく不器用です。シューマンがクララにクライスレリアーナについて送った手紙には「この曲はあなたとあなたへの気持ちが主役です」と書いてありました。クライスレリアーナのみならずアレグロ、暁の歌、このディスク全体を通してシューマンの本質が見えてきます。

輸入盤【廃盤】盤面傷無し　17
開封済みですが新品に近い美品です

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